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上原のあ@uen70ika

No.158

Weapon in Twin,WIT_SS

糺キアちゃん 即興小説SS
糺キアちゃん 即興小説SS

お題:公園・春一番の吹く日・ときめき
5分ちょい



 出かけるには酷い風が吹いていた。おさまる気配はなくむしろ強まった風に、髪の毛を必死に撫でつけながら、キアは「少し休憩しよう」と提案した。
 それに特に異を唱えることもなく、糺雷は軽く周囲を見渡した。喫茶店のようなものが見当たらない住宅街に差し掛かっていた。ちょうどあった公園が目にとまる。ベンチのひとつくらいはあるだろうと、糺雷はキアを誘導していく。

「すごい風だね」
「春一番やな」
「春一番?」
「春の入りに吹く風……こっちでも吹くとは思ってへんかったけど」

 ベンチに腰掛けて息を吐いたキアが、ぶるっと大きく震えた。春を感じるにはまだ風が冷たく、日射しの温度も足りていない。寒いのだろう、と糺雷がキアの肩を抱く。

「……冷たいか?」
「え!? う、ううん、だいじょうぶ」

 びくりと跳ねたからなにか冷えた部分が頬にでもあたったのかと思ったが、そうでもなかったらしいと糺雷は首を傾げた。少しだけ寄りかかってくる体重に暖かさを覚える。自分の体も冷えていたらしいと、うっすら自覚した。


#-糺雷 #-うちよそ畳む

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