上原のあ@uen70ika
No.161
つぶやき
いつか君を見つけた時に 君に僕も見つけてもらったんだな
太陽がなくたって 歩ける 君と照らす世界が見える
君の一歩は僕より遠い 間違いなく君の凄いところ 足跡は僕の方が多い 間違いなく僕の凄いところ
2025.7.18 >161
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※別の場所で晒していたものをてがろぐに投げようと思ってコピペしています。同じ文を発見したらそれは私です。
映画化にあたって、「ネタバレを見る前に、なんの前情報もなく観てほしい」というツイートをたくさん見たので、読むことにした。読むことにしてからウルトラ時間かかったが。
幸いにしてTwitterのTLに読者が少なく、ネタバレをくらうこともなかった。映画館にはなかなか行かないので、公開された予告編に触れてしまうこともなかった。
しかしネタバレ厳禁の空気があるために、逆に感想を言うことができない。予告はあんなにネタバレしていたのにもかかわらず、だ。
だからここで自由にぼやく。
まあしかし、だいたいの作品ってネタバレ食らわないほうが面白いとは思います。
!ネタバレ プロジェクト・ヘイル・メアリー
上巻前半
正直この小説、最初面白いと思えなかった。
いや、私はSFというジャンルをほとんど読まないのだ。今ちょっと改めて小説で読んだことのあるSFっぽいジャンルを考えてみたが、恥ずかしいことに全然思い浮かばなかった。
『精霊の木』(上橋菜穂子)あたりくらいだろうか。読んだことのあるSF小説を挙げろって考えて上橋菜穂子挙げる人そうそういないと思う。あらすじとかジャンルとかで読んだんじゃなくて、作者買いだし…。
小説から広げて考えても『火の鳥』(手塚治虫)あたりだろうか。うーん…。映画もあまり観ないので、アニメで…グレンラガンくらい…? とか思った。グレンラガンをSFとして挙げる人も少なそうだ。
とにかく読んでいないジャンルな上に、普段日本人作家の作品ばかり読むのでまぁ文体に慣れない。慣れない文体×慣れないジャンルで結構苦しかった。
要するに私が翻訳SF受容体がないせいで「面白いと思えなかった」なのだ。
しかも学生時代一番苦手だった科目が物理、生物はほぼやってない、の状態。とにかく続く話題が苦しい。目が滑るので逆に目が滑るのを許すことにした。
オーケイ、私は今、物語を楽しむためにこの本を開いている。決して、学生時代に理解を諦めた科学のお勉強をするためじゃない。大切なのはこの主人公がミッションを達成できるか、ということであって、物を落とした時の秒数で重力加速度を導き出す行動の途中式を理解することじゃない。そうだろ?
最終的には馴染んだのだが、途中までつらくて翻訳文体ごっこで遊んでいた。
でもまあ、「流れ変わったな」という感覚がするシーンはちょこちょこあったし、苦痛すぎて読むのを投げるほどじゃなかった(途中で数か月放置はしたが、普通に他のことで読書の時間が取れなくなっていた)。なんか闇雲に探してたら天上の力で状況が把握できるのではなく、知識で状況が開けていくのが面白かった。
上巻後半
明らかにロッキーの登場から面白くなった。
めっちゃはっきり言うけど、ビフォーロッキーとアフターロッキーでこの小説はジャンルが変わると思う。記憶喪失のせいでミステリーっぽささえあるSFから、バディものになるっていうか…。
光ったら光り返す、同じ行動をとる。余談だが私は正しくロッキーの船を想像できておらず、読了後映画の予告編を見て「でっっっっっっっっっっっか」となった。デカすぎ。
私は言語学が大好きなので、懸命に意思疎通をはかる二人、意思疎通に意欲的で、相手が意思疎通を図ろうとしていると気づける姿にめちゃくちゃ興奮した。あまり文法の話は細かくされていないけど(この作品でそれやると冗長だろうし…)音楽めいた音を奏でる種族、あまりによすぎる。
ついつい描写のないキャラの心情を想像しようとしてしまう。ここ、ロッキー視点で考えるとすごい”福音”だったのでは。
多分観測者としてヘイル・メアリーのことに先に気が付いたのはロッキーだと思う。種族的・文化的に孤独であることを人間以上に恐れているだろうロッキーが孤独を耐え、滅びが原因不明の仲間の死により近づいてくる中で見つけた人工物、意志のあるもの。まだ目覚めたばかりで記憶も手探りで「何ができるかな」と考えはじめる段階のグレースと違って、ロッキーはどん詰まりの中に既にいる。
グレースは「人類ではじめて地球外生命体とコンタクトを取った!これってミッションに必須かな?いや…でも地球外生命体だぞ!」みたいなテンションだけど、ロッキーにとっては確実に光明なわけで…。
必死だったんだろうな…コンタクトを取って、友好的なら、解決に至らずともせめて寝ているところを見守ってもらえるだろうし。
とか思うと、グレースが寝過ごして怒るのも、人間がいっぱい寝るのを知って落胆するのも、凄く胸に刺さる。40年とかきっと今まで経験したことがなかったくらい長い長い孤独が思いがけない形で癒されると思ったらまた孤独になるの、耐えられなかったんだろうな。あと二度と目覚めないかもしれない不安とか…。
奇跡みたいなものが掻き消えるかもしれない、ある種、縋ってるんだと思う。
可愛すぎる…。絶対いつか別れることになる存在だけど、初期からずっと可愛かった。グレースにとっては未知への興味興奮だけど、ロッキーにとってはマジで救済だったんだなと思うと…。
グレースは孤独と試行錯誤の末の挫折・絶望を宇宙で味わっていないから、ロッキーにとってのグレースって存在の比重が違うよなあマジで。
ロッキーの出現から話がぐいぐい大きく進み、私の進捗もめちゃくちゃよくなった。科学は依然として1%くらいしか理解していないが、逆に言えばそれでも楽しい作品だということなのでヨシ。
過去パートについては冒頭は物語が進む鍵で面白かったが、アストロファージのこと思い出してロッキーと出会ってからは「ロッキーの話見せて!」という気分になっていた。薄情である。
アフターロッキー
アフターロッキーの話はテンポが段違いで、問題→解決のサイクルが凄い。「もう沈むなよ」という気持ちに幾度となくさせられた。でもこの作品、「これ原因でヤバくなりますからね」とにおわせてからヤバくするまでの間が短いんだよな。
何度も沈み込んではお互いに励ましあう姿、時に命をかけて相手を助けている姿、バディものとしてアツすぎる。SFじゃなくてバディものって言われた方が手に取ったと思うけどそれネタバレとしてデカすぎる。
『感電/米津玄師』じゃなくて『アカシア/BUMP OF CHICKEN』ですよねこのバディは。
え!?!?!? グレースとロッキーじゃん。ありがとう
え!?!?!??!?!?! このシーンあったって。
オタクが出てしまった
とにかくアフターロッキーはどこまで上巻で、どこから下巻だったのか記憶があいまい。マジで一気に読んでしまったんですよね。今感覚で文章を書いています。
ロッキーは「技術者」「聞こえるが見えない」、グレースは「科学者」「見えないと動けないが聞こえなくても見える」というのがすごく要所要所で活きていて、実にお互いのことを補い合うバディもののよさが感じられました。
え!?!?!?!?!?(略)
お互いに「自分が死んだら仲間がみんな死ぬ」というミッションを背負ってるのに、相手を助けるために命がけになってるのめちゃくちゃ、めちゃくちゃいい。実際お互いがいなければ何も解決しないっていうところもあるけど、そういう損得抜きな感じする。それがいい。
ほんとマジで”萌え”なんだよな。この作品って萌えって感じだったんだ…ってなった。
「ネタバレ厳禁」ってだいたい叙述トリックにつく話じゃないですか。そうじゃなくて「ミステリーかと思ったらバディものだった」という方向か~って思いました。
別のとある作品で近い事象に遭遇したけど、そっちはマジで私の中では普通の”裏切り”(ショートケーキ注文したつもりでハンバーグ食ってる)みたいなとこがあり…。その点プロジェクト・ヘイル・メアリーは「SF」を期待して席に着いたのでコーヒーゼリーではなくプリンだったくらいの感覚なので問題なく美味しかったです。
話を戻そう。
ロッキーとの出会いにより「死出の旅」が「帰れるかもしれない旅」になったシーン、めっちゃ泣きそうになったんですよね。ここにいるということはここで、しかも仲間たちも死んじゃったまま独りで死ぬんだってことが確定していたのに、ロッキーとの出会いで、孤独でもなくなり、帰るための燃料を補えるようになった…。
グレースは記憶を失っていたこともありロッキーとの出会いは”未知との遭遇”であって”救い”ではなかったけど、ここで明確に”救い”になるのもよかったんですよね。互いが互いの救い。ロッキーはきっとグレースと出会っただけで既に救われているから、グレースに返そうとしてくれている。
でもこの辺読んでるとき、グレースは地球に帰れなくなる気がした。帰って欲しいけど、物語の型として、ここで見せられた希望はたぶん裏切られる。みたいな。ああ~バッドエンドな本じゃないといいなあ~それか地球は救われるけどグレースは…とかならないといいなあ~とずっとこの涙のシーンを見ながら思っていた。
んで!!
その不安の解消の仕方が…このエンド!!
別れてからの最大の危機、タウメーバがキセノナイトをすり抜ける案件。キセノナイトが密閉容器としてはダメなんだと気づいたときに、グレースが気にするより先にロッキーの心配をしていた。
『原因と対策はわかった。大丈夫だ、地球には帰れる。でもロッキーは?』という問い。うわーこうくるんだ!! と思った。
いやこのちょっと前に「未知のものに対する実験、なんの問題もあるはずもない」とか書いてあるから絶対何か起こるのにお別れ済ませちゃった…と不安にはなってたんですが。
お互いに寿命差とか考えたらもう再会はできないね、って感じで別れて…ここからどうするのか…と思ったらこれ…!
死出の旅に出ることを拒否して地球に帰りたかった男が、自分の意志で死出の旅に出ることを決意してるんだな…。
そう、過去パートって正直アストロファージのことがわかった後はそこまで私は重きを置いてなかったんですが(ロッキーに萌えてたのもある)、「中学教師でしかないグレースがなぜそんな重大な任務に?」というのは、記憶を取り戻せば取り戻すほど謎ではあったんですよね。
それが、死出の旅と覚悟して出てきたが記憶を失った男ではなく、一番の適任者が死んでしまったがゆえに、断固拒否したにも関わらず無理矢理乗せられて、悲しいことに一人で生き残ってしまった男だった。
そのグレースが、結局問題を解決する方法を得て、まあちょっと頑張れば帰れると気づいたのに、あえて確実な死が待っているところに行くのか…という。
決意せずこの場に立った男がした決意なんですよねこれ。良すぎる…。
ちゃんと葛藤して、帰りたい気持ちにも目を向けて、それでも下す決断なのがいい。
そしてロッキーの元に2度現れる孤独からの救い、”光”すぎる。いやロッキーはその救いを光とは呼ばないだろうけど。どんな気持ちでロッキーはグレースの立てた音を聞いたんだろう。甲高い声っていう描写が好きだ。
ロッキーの元に戻ったことで、大丈夫なのか曖昧だった食糧問題も解決する。マジで『大団円にするにはこれしかなかった』みたいな選択だと思う。何よりロッキーが絶対に生かすと決意してくれているのが、よすぎる。
別れで終わるのではなく、移住で終わるのが凄く意外で、でもそれに納得感があってよかった。エリディアンたちもそりゃ、なんなら彼ら全員を救ってくれた存在を見捨てはしないよな。ロッキーが一生懸命説明してくれたりしたのかな~と想像した。
この物語、徹頭徹尾グレースの一人称なのがよかった。
すごく余白のある物語なんだなって思うんですよね。二次創作の余地って余白の部分だと思うんです。
普段だらだら読んでいるのは女性向けファンタジー寄り恋愛ライトノベル系なんですが、そっち系ってけっこう事細かに相手キャラの心情を時系列順になぞっちゃうんですよ。そのパートって好きだけど、好きだけど、たまに「説明しすぎ!!」ってなっちゃうんですよね。敢えて書かないことによる余地、好きなんだよな(余談だけど、そのへんの塩梅、『死に戻りの魔法学校生活を、元恋人とプロローグから』という作品が大好き)。
グレースの一人称だからこそロッキーをはじめとした登場人物たちの心情を妄想する余白が生まれてるんだよな。地球にいた人々の気持ちとかさ…。
ロッキー視点の二次創作見たいけど、見たくない。あの余白がいいんだという気持ちと、いや二次創作は見たいみたいな気持ちがある。
エピローグがあっさりしすぎていてもっと見たかった。明らかに流暢になった二人の会話。「質問?」ってついてないロッキーの台詞に、年月を感じるわけです…ねえ…。この間がさあ…。
こう思わせてくれるのはすごくいい作品の証のようにおもう。
長々書いたがうろ覚えで雑に書いているので浅い感想をここで終える。身近な誰かが読んでアカシアのことを共有してくれますように。畳む