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上原のあ@uen70ika
No.86
Weapon in Twin
,
WIT_SS
リァーチェとテレーザちゃん
リァーチェとテレーザちゃん
数年前にTwitterでざっと書いていたものを軽くまとめたものです。ホラー意識したけどちょっと言葉足らずだったかな……。
幼馴染バディ。
#-うちよそ
#-リァーチェ
>>
森の中をガサガサと進む。
足場も悪く、日の射さない場所だ。昼間の筈なのに薄暗く、水晶のように透き通る茸が薄ぼんやりと照らしているのを頼りに道を進む。
以前にも通ったことがあるように思うけれど、私の記憶はあてにならないと、散々テレーザに言われた。
写生をしている途中に、綺麗な景色を見つけたと言われて連れ出された。ぼうっと寒色のライトが照らし出す獣道は幻想的で美しかったけれど、ずいぶんな道を来たのになかなか目的地に着かないのが不思議でもある。
「そろそろつくよ、リァーチェ」
私の気持ちを読んだかのように、前を歩くテレーザが言った。
まだ森は続いている。同じような景色が延々と広がっているように見える。
「見せたかったのは、この道ではないのですか?」
思わず尋ねてしまう。それほどに長々と歩いていた。
「ここも綺麗だけど」彼女は森の中を迷いなく歩いていく。「もっと綺麗だった」
その時ふと、頬を風が打った。水晶茸の生い茂る森の、どこかから風が吹き付けてくる。
——水の匂いがする。
ふと私は立ち止まった。木々の葉は少しも揺れないのに、私の髪が風に流れた。
数歩前、先導していたテレーザが立ち止まって、私のほうを振り返ろうとする。
「——リァーチェ」
テレーザの声がして、肩をぐい、と掴まれ、引かれる。
後ろへ。
どさり、と尻餅をつくが、何か——いや、誰かを下敷きにしているらしかった。最近減っていたけれど、慣れた感触だ。
「……テレーザ」
はぁ、はぁ、と彼女は荒れた息を数呼吸していくらか整えてから、「何してるの!」と悲鳴まじりに言った。
「……景色を見る、と…………」
振り返ると、先ほど立っていた場所の数歩先には地面がなかった。ごうごうと川が音を立てて流れる音が反響して微かに聞こえる。
「……あぁ」
ぽつん、と呟く。
「なるほど」
立ち上がるのも面倒で、這って崖下を覗き込む。
「危ないってば!」
「いえ。気をつけているので大丈夫です、見てください。ほら——」
指さした先、覗き込まなければ見られない此岸の絶壁に、たくましく生える美しい花があった。
「綺麗な花でしょう」
テレーザは軽く覗いたが、すぐに顔を引っ込めた。
「あれ、花粉に幻覚作用があるって。前に薬草学でやったでしょ」
「……。そうでしたか?……もしかしたら寝ていたかもしれません」
実物をもう少し見よう、と身を乗り出して、ぐらりと体が傾ぐ。
「……やっぱり」
すぐさま襟を掴んで後ろに引かれた。
「素晴らしい反応速度ですね、テレーザ。ありがとうございます。あわや落ちるところでした」
「絶対やると思ってたからね……」
幼馴染は、今までにも幾度となく見た表情で、深くため息をついた。
「ほら、もう、危ないから帰るよ」
テレーザに手を引かれて立ち上がる。ふと、その手が汗ばんでいるのに気がついた。少しだけの震えが、繋いだ手から伝わってくる。
「はい。そうしましょう」
だから、絵を描くのは諦めて、私も彼女にならう。
事情を聞かれて、テレーザの姿をしたものに連れられたのだ、と説明すると、テレーザはがっくりと肩を落とした。
「危うく景色を見に行こうとして彼岸に行くところでした。すみません」
「私も運命共同体なんだからね……」
薄暗くじめじめとした森は光源がわずかな木漏れ日しかなく、奇妙に捻じ曲がった形の茸が乱立していた。
「……もう光っていないのですね」
「光る?」
「茸です」
「何言ってるの。元から光ってなかったよ……」
おや、と思う。そういえば、あのときは水晶のような形をしていたのに、今はまるで絵本に出てくる魔女の家のようにうねっていた。
「……それも幻覚作用の一部だったんだろうね」
「あれだけでも、充分に綺麗でしたよ」
「うーん……」
テレーザは苦笑した。
「あれが光ってた、っていうのは……。絵で見るぶんには綺麗かもしれないけど、実際歩くってなったら、ちょっと怖い、かな」
「……。……なるほど。そういう考えもあるのですね」
テレーザに曰く、その花は危険性の高さに加え、絶滅危惧種として目されているそうで、野生環境下で発見した場合は報告するよう言われた花なのだという。
夢うつつにそんな話を聞いた、ような気がしなくもない。おそらく、作品を仕上げるために夜更かしをして眠かった日のことだ。そんな風に呟いていたら、彼女はまたため息をついた。
機関に戻った私たちは、その花についての報告書を書いた。
——が、調査に行った戦闘員にも、その花は、見つけられなかったという。
キャンパスに筆を走らせながら、あの美しい光景を描きだしていく。
「意志あるものを幻覚により呼び寄せて、血を養分としている、とか……」
ぽつぽつと呟いて、不意にその仮説がしっくりきた。地面の下に、養分とされた人間がいて――――
――そんなことを考えつつ完成させた絵を見て、テレーザは少し眉を下げたのだった。
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2024.11.16 >86
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数年前にTwitterでざっと書いていたものを軽くまとめたものです。ホラー意識したけどちょっと言葉足らずだったかな……。
幼馴染バディ。
#-うちよそ #-リァーチェ
森の中をガサガサと進む。
足場も悪く、日の射さない場所だ。昼間の筈なのに薄暗く、水晶のように透き通る茸が薄ぼんやりと照らしているのを頼りに道を進む。
以前にも通ったことがあるように思うけれど、私の記憶はあてにならないと、散々テレーザに言われた。
写生をしている途中に、綺麗な景色を見つけたと言われて連れ出された。ぼうっと寒色のライトが照らし出す獣道は幻想的で美しかったけれど、ずいぶんな道を来たのになかなか目的地に着かないのが不思議でもある。
「そろそろつくよ、リァーチェ」
私の気持ちを読んだかのように、前を歩くテレーザが言った。
まだ森は続いている。同じような景色が延々と広がっているように見える。
「見せたかったのは、この道ではないのですか?」
思わず尋ねてしまう。それほどに長々と歩いていた。
「ここも綺麗だけど」彼女は森の中を迷いなく歩いていく。「もっと綺麗だった」
その時ふと、頬を風が打った。水晶茸の生い茂る森の、どこかから風が吹き付けてくる。
——水の匂いがする。
ふと私は立ち止まった。木々の葉は少しも揺れないのに、私の髪が風に流れた。
数歩前、先導していたテレーザが立ち止まって、私のほうを振り返ろうとする。
「——リァーチェ」
テレーザの声がして、肩をぐい、と掴まれ、引かれる。
後ろへ。
どさり、と尻餅をつくが、何か——いや、誰かを下敷きにしているらしかった。最近減っていたけれど、慣れた感触だ。
「……テレーザ」
はぁ、はぁ、と彼女は荒れた息を数呼吸していくらか整えてから、「何してるの!」と悲鳴まじりに言った。
「……景色を見る、と…………」
振り返ると、先ほど立っていた場所の数歩先には地面がなかった。ごうごうと川が音を立てて流れる音が反響して微かに聞こえる。
「……あぁ」
ぽつん、と呟く。
「なるほど」
立ち上がるのも面倒で、這って崖下を覗き込む。
「危ないってば!」
「いえ。気をつけているので大丈夫です、見てください。ほら——」
指さした先、覗き込まなければ見られない此岸の絶壁に、たくましく生える美しい花があった。
「綺麗な花でしょう」
テレーザは軽く覗いたが、すぐに顔を引っ込めた。
「あれ、花粉に幻覚作用があるって。前に薬草学でやったでしょ」
「……。そうでしたか?……もしかしたら寝ていたかもしれません」
実物をもう少し見よう、と身を乗り出して、ぐらりと体が傾ぐ。
「……やっぱり」
すぐさま襟を掴んで後ろに引かれた。
「素晴らしい反応速度ですね、テレーザ。ありがとうございます。あわや落ちるところでした」
「絶対やると思ってたからね……」
幼馴染は、今までにも幾度となく見た表情で、深くため息をついた。
「ほら、もう、危ないから帰るよ」
テレーザに手を引かれて立ち上がる。ふと、その手が汗ばんでいるのに気がついた。少しだけの震えが、繋いだ手から伝わってくる。
「はい。そうしましょう」
だから、絵を描くのは諦めて、私も彼女にならう。
事情を聞かれて、テレーザの姿をしたものに連れられたのだ、と説明すると、テレーザはがっくりと肩を落とした。
「危うく景色を見に行こうとして彼岸に行くところでした。すみません」
「私も運命共同体なんだからね……」
薄暗くじめじめとした森は光源がわずかな木漏れ日しかなく、奇妙に捻じ曲がった形の茸が乱立していた。
「……もう光っていないのですね」
「光る?」
「茸です」
「何言ってるの。元から光ってなかったよ……」
おや、と思う。そういえば、あのときは水晶のような形をしていたのに、今はまるで絵本に出てくる魔女の家のようにうねっていた。
「……それも幻覚作用の一部だったんだろうね」
「あれだけでも、充分に綺麗でしたよ」
「うーん……」
テレーザは苦笑した。
「あれが光ってた、っていうのは……。絵で見るぶんには綺麗かもしれないけど、実際歩くってなったら、ちょっと怖い、かな」
「……。……なるほど。そういう考えもあるのですね」
テレーザに曰く、その花は危険性の高さに加え、絶滅危惧種として目されているそうで、野生環境下で発見した場合は報告するよう言われた花なのだという。
夢うつつにそんな話を聞いた、ような気がしなくもない。おそらく、作品を仕上げるために夜更かしをして眠かった日のことだ。そんな風に呟いていたら、彼女はまたため息をついた。
機関に戻った私たちは、その花についての報告書を書いた。
——が、調査に行った戦闘員にも、その花は、見つけられなかったという。
キャンパスに筆を走らせながら、あの美しい光景を描きだしていく。
「意志あるものを幻覚により呼び寄せて、血を養分としている、とか……」
ぽつぽつと呟いて、不意にその仮説がしっくりきた。地面の下に、養分とされた人間がいて――――
――そんなことを考えつつ完成させた絵を見て、テレーザは少し眉を下げたのだった。
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